使いやすいソフトウェア―より良いユーザインタフェースの設計を目指して― 

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書籍情報
ISBN978-4-320-09746-9
判型B5変型 
ページ数504ページ
発行年月2005年11月
本体価格4,800円
使いやすいソフトウェア 書影
使いやすいソフトウェア

 本書はその原書名『Software for Use』のとおり、「使うためのソフトウェア」すなわち「使えるソフトウェア=役に立つソフトウェア」の設計のための書である。ユーザにとって優しいソフトウェアを設計するために、開発現場の実務者が考えるべき事柄は多い。ユーザ要求を満たす機能や性能をシステムが備えることは当然の必要条件であるが、役に立つ良いソフトウェアであるためには、それだけでは十分でないことは明らかであろう。特に本書で取り上げているユーザインタフェースの設計については、残念ながら過去そのありようについてあるいは具体的な方法論について公にされたものはほとんどない。
 原著者いわく、本書で取り上げる使用法中心設計は、「単に使いやすいだけでなく単純で構築しやすいソフトウェアを作り出すシステマティックなアプローチである」。
 本書ではいくつかのモデルを用いてシステムに対するユーザ要求と業務を遂行する中でのユーザ意図を明示的にするよう努め、それらを支援するシステムの設計を容易で一貫したものにしようとしている。本書は抽象化を重視しており、基本的に3つの抽象モデル、すなわち、役割モデル、タスクモデル、コンテントモデルを用いているが、加えて、ユーザインタフェースの仕様を完全なものにするために、運用的モデルと実装モデルの利用を提唱している。
 「使用法中心設計」アプローチでは、ユースケースとユースケースマップを用いてタスクモデルを構築し、インタフェース文脈モデルとナビゲーションマップを併用して、ユーザインタフェースアーキテクチャを明らかにしようとする。
 しかしながら、本書をインタフェース設計のハウツウの書と見るべきではないであろう。ソフトウェアシステムに限らず、良いシステム設計はシステムの実現すべき目標を明らかにし、開発行為を不必要にしばることなく選択の余地を残すためにできる限り抽象化した形でそれを表現することを基本とする。すなわち、本書はモデルをベースに繰り返し設計試行を行うことで創造的な設計が可能になるとの哲学の下に、ユーザインタフェース設計の基本に立ちことを勧める書とみるのが妥当であろう。
 どのような設計が良い設計であるかは当然ながら数多くの視点があり、あらゆる場合に通用する良い設計などはありえない。ソフトウェアシステムの設計ならずとも設計に対する一般的でシステマティックなアプローチすなわち方法論は非常に価値あるものであるが、それを具体的に説明するのは至難の業である。それゆえ、どこの工学分野でも過去から現在まで数多くの試みが連綿と続けられてきている。
 本書は、真のユーザの特定と、そのニーズに基づいた役に立つソフトウェアの「設計」を可能にする、原則とモデルに立脚した手法を説く書であり、主としてユーザインタフェース設計について、現場の実務者に設計のありようを考えるきっかけを与える書である。具体的には、使用法中心設計のルールと原則として、「アクセス」「有効性」「進歩」「支援」「文脈」の5つのルールと、「構造」「単純化」「可視化」「フィードバック」「寛容」の5つの原則を掲げている。
 読者に設計法を示唆するには、一般的には例示に頼るのが通常であって、本書では良い設計や問題のある設計を説明するために数多くの例が示されている。しかし事例はあくまで事例にすぎないし、大きく複雑な事例を折りこむことは書籍として現実的に困難であるし、それが望ましいわけでもない。繰り返しになるが他の工学の場合と同様、設計法を説くにあたっては設計事例のあるものを、時としてその評価も併せて示し、設計者に自ら考える機会を提供することこそが重要であろう。
 近年ソフトウェアの重要性がますます増大する中で、ソフトウェア品質についての問題が表面化している。同時にソフトウェア工学の発展とともに品質を狭義にシステム欠陥あるいは瑕疵の問題としてみるのではなく、広義のシステムの利用性あるいは創出する価値としてとらえようとする動きも出てきている。ソフトウェアのアーキテクチャや設計の重要性についてようやく認識が深まりつつあるといってよい。にもかかわらず、ソフトウェアの世界では言語や手法のハウツウはいざ知らず、今まで「設計」に関する書はほとんど著されていない。我が国大学の情報工学教育の中でも「設計」について教えているところは極めて少ないと思われる。日常ソフトウェアの開発現場に携わるものとして、読者がこのような書を目にしてインタフェース設計の本来のあり方を考える機会をもってくれればと願う。
[監訳者のことば]より抜粋]
[原著 Larry L. Constantine,Lucy A. D. Lockwood: Software for Use ― APractical Guide to the Models and Methods of Usage-Centered Design,Addison-Wesley, 1999]
(発行元:(株)構造計画研究所,発売元:共立出版)

目次

第I部 もっと役に立つソフトウェアに向けて

1.役に立つソフトウェア:利用のあり方、ユーザビリティ、ユーザインタフェース
ユーザビリティの向上
ユーザビリティに向けて
流れを変えて

2.作りつけユーザビリティ:使用法中心設計アプローチ
ユーザとのインタフェース
使用法中心アプローチの要素
モデルの利用
整理されたアクティビティ

3.原則:使用法中心設計のルールと原則
対話としての設計
ルールと原則
ユーザビリティルール
ユーザインタフェース設計の原則
その他のルール
詳細、詳細、詳細


第II部 ユーザビリティの基本モデル

4.ユーザとの関連:ユーザとその役割の理解
利用とユーザ
真のユーザとその他の人々
ユーザ役割モデル
ユーザ役割マップ
ユーザ役割
構造化役割モデル

5.作業の構造:基本ユースケースによるタスクモデリング
仕事、仕事、仕事
タスクモデリング
ユースケースマップ
基本ユースケースモデルの構築
アプリケーション

6.インタフェースアーキテクチャ:インタフェースの内容と使い方
仕事の場
インタフェースの内容
文脈ナビゲーションマップ
アプリケーション


第III部 ビジュアル設計

7.対話の設計:レイアウトとコミュニケーション
抽象化から表現へ
コミュニケーションチャネル
スクリーン資産

8.実務的仕掛け:ビジュアルコンポーネントの選択と設計
購入か開発か
アイコンによるコミュニケーション
メニュー
選択の仕組みの選択

9.革新的インタフェース:創造的インタフェースエンジニアリングとカスタムのコンポーネント
創造的エンジニアリング
革新のプロセス
教育的インタフェース
応用的技術革新


第IV部 設計を仕上げる

10.ソリューションの表現:実装モデリングとプロトタイプ
遊びの要素
プロトタイプとプロトタイピング
モデルの位置づけ
実装モデリング

11."ヘルプ!":ヘルプと役に立つメッセージの設計
エキスパートだって助けが欲しい
ヘルプのユースケース
アクセスと表現技法
特別な技法と様式
役に立つ書き方
役に立つメッセージ

12.誰もがはじめは初心者:発展的利用パターンの支援
初心者を越えて
インタフェースを体得する
進歩的使用法
協力的なインタフェース
進歩的使用法の設計
進歩的使用法の応用

13.場に合わせて:運用的文脈との適合
不健全な流れ
運用的モデリング
環境との適応
全体を束ねる文脈
環境プロフィール
文脈を活かす


14.場は違えども同じゲーム:特別のアプリケーションと特別な課題
ふたたび、テーマとバリエーション
ウェブ設計
ウェブの知恵の応用
組込みシステム
その他の特殊なインタフェース

15.使用法中心設計の応用:TeleGuidaの事例
規模の拡張
電話帳
要求のとりまとめ
先に進む
TeleGuidaユーザとその利用法
TeleGuidaプロトタイプに向けて


第V部 アセスメントと改善

16.次はもっとうまく:インスペクションとレビューによる改善
ユーザビリティの評価
インスペクション手法
協働ユーザビリティインスペクション
的をしぼったインスペクション

17.数値:実際のユーザビリティの測定
比較
測定品質
ユーザインタフェース設計尺度
基本ユーザビリティ尺度セット
実用尺度

18.テスト評価:実験室とフィールドにおけるユーザビリティのテスト
履歴テスト
テスト、1、2
テストプロトコル
テスト戦術
なぜテストするのか? しないのか?


第VI部 プロセスの組織化と管理

19.コーディングをすればおしまい:インタフェースの実装
オブジェクトとインタフェース
短期開発
ビジュアル設計のビジュアル開発

20.ユーザを利用する:開発プロセスにおけるユーザ
ユーザの利用と乱用
要求に関する対話、要求定義儀式
本源に
ユーザを利用する
共同基本モデリング

21.組織化する:より大きな文脈の中におけるユーザビリティ
組織的単位
標準とスタイルガイド
対立する関係者
エキスパートと専門技術
文化的な適合


付録
A.ソフトウェア開発者にとって役に立つ参考書
B.ソフトウェアユーザビリティの一般的基準
C.用語集
D.使用法中心設計用書式の例
E.ソフトウェアの主観的ユーザビリティ尺度(SUSS)