ソフトウェア開発のカオス

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書籍情報
ISBN978-4-320-09740-7
判型A5 
ページ数368ページ
発行年月2003年12月
本体価格3,200円
ソフトウェア開発のカオス 書影
ソフトウェア開発のカオス

ソフトウェア開発の世界は、文字どおり容赦のない技術の進歩と激しい利用環境の変化の中で、混沌とした状況(カオス)が続いている。今さら言うまでもないが、ビジネス組織・社会組織活動に占めるソフトウェアとソフトウェアシステムの重大性は増大し続けており、我々個人の日常生活もかつてないほど情報技術・コミュニケーションシステムに対する依存度を強め、今後さらにそれが加速度的に強まっていく流れにある。そのような中ではソフトウェア開発管理がうまくいかなかった場合の社会的損失・個人的損失は計り知れないものがあり、実際にそのような損失は米国だけで2001年には7兆円以上にものぼったとの報告がある。
残念ながら、我々は事実上、ソフトウェア開発を十分手なずけることができないでおり、課題はさらに深刻の度合いを増している。ますます増大するユーザ要求とそれに伴うシステムの複雑化、システムのシステムと呼ばれるようなシステム間の接合機会の増大、世界中に張り巡らされたネットワークシステムならずとも、必然的に直面する24時間ノンストップ稼動、ネットワークの絡んだセキュリティ、だれが本当に責任を持ってくれるかわからないフリーソフトウェアの広がりなど、どれ1つをとってもソフトウェア開発をとりまく状況はますます複雑化し、手に負えなくなってきている。
一方、高信頼ソフトウェアの開発に向けての要求定義工学や品質工学の組織的研究や実証的研究も進みつつあり、ISOやSEI(Software Engineering Institute)やプロセス改善やベストプラクティスの普及による組織のソフトウェア能力の構築の動きもようやく関心が高まりつつある。我が国においても、「ソフトウェア開発能力の飛躍的向上を実現するための継続的研究開発投資の実現」、「我が国ソフトウェア生産/技術・基礎技術研究のあり方」を産学官の協調体制をベースに追求しようという国家的な取り組みが今改めて形をとりつつある。
もとより、ソフトウェア開発は多様である。本書は、延べ31人にものぼる米国のこの道の専門家による豊富な経験と叡智に富んだ洞察に裏付けされた小文を集めたもので、いずれも著名な専門誌であるSoftware Developmentの巻頭を飾り人気の高かった珠玉のエッセイである。ゲストコラムニストは「現場の実務家にとって今日すぐ役に立つ話」と「明日に向けて考えるべき主題の提供」を共に実現するよう要請を受け、それぞれに見事にそれを果たしている。巻頭文の性格上それぞれの文章は短いが、その分濃縮されている。もとより「How to」などではないから、すべてを網羅的に読む必要はさらさらないが、読者は至るところで我が意を得たりとひざを打つ文章に出合うに違いない。思えば我々は技術の早い変化の中にあって、日常ついつい「How to」に追い回されがちで、心静かに考えるべきテーマについて明日を考える時間を取れずにいることが多い。折りあらば、本書の多領域にわたるエッセイの中から好きな章を選んで読み、明日のソフトウェア開発と開発者管理について自ら考えるよすがとされることをお勧めする。
(「監訳者の言葉」より抜粋)
[原著 Larry L. Constantine: Beyond Chaos:The Expert Edge in Managing Software Development, Pearson Education, 2001]
(発行元:(株)構造計画研究所,発売元:共立出版)

目次

第1部 人々について
第1章 難しい人々と付き合う:変えられるものを変える

第2章 フィードバックの落とし穴を避ける:顧客とのコミュニケーションの改善

第3章 訓練を受けた専門家:訓練を越えて変身へ

第4章 バランスの維持:仕事上の関係の管理

第5章 資格証明:最良の人を雇う

第6章 問題解決のメタルール:生産的な人々の習慣

第2部 プロジェクト管理
第7章 最初になすべきことを最初に:プロジェクト管理者の初歩的心得

第8章 財布とバット:スポンサーシップのルール

第9章 生産性数値:ソフトウェア開発を促進させるもの、遅滞させるもの

第10章 ソフトウェア廃棄物の管理:データの移行を管理する

第11章 疑わしきは皆を責めよ:ユーザビリティの責任

第12章 創造的インプット:将来に対する夢から実用的な製品へ

第13章 ソフトウェア・コラボレーション:共同作業の複雑な諸要因をいかに管理するか

第14章 アウトソース・プロジェクトの管理:プロジェクト管理のインサイドアウト

第15章 タフな顧客:Win-Winソリューションへ向けて

第16章 氷山を避ける:プロジェクトの警告サインを読む

第17章 酸っぱいレモンから甘いレモネードを:プロジェクトの失敗から学ぶ

第3部 プレッシャーを受けて
第18章 デスマーチ:絶望的なプロジェクトで生き残る

第19章 「Webタイム」の開発:ハイスピード・ソフトウェア工学

第20章 危機的状況から抜け出す:強制的超過勤務の代案

第21章 サイクルタイムの現象:ボトルネック、障害を越えて

第22章 ドッドコム管理:スタートアップ症候群を生き抜く

第23章 切り詰める:モデル主導型Web開発の近道

第4部 品質要求
第24章 言い訳不要:革新的な技術と不適切な方向づけ

第25章 混乱は自分の過ち:ソフトウェア・ギルドに向けて

第26章 再利用の魅惑:再利用コンポーネントの実現

第27章 実社会における要求:品質と期限のトレードオフ

第28章 ルールが全てを支配する:要求定義としてのビジネスルール

第29章 野生のWebを飼いならす:Web開発のためのビジネスとの整合性

第30章 企業の免疫システムを抑え込む:リスク回避体質の克服

第31章 ソフトウェアを発明する:オンデマンドでブレークスルー

第5部 プロセスとプラクティス
第32章 自由秩序:適応についての機能的なモデル

第33章 レベル5を超えて:最適化から適応へ

第34章 最適化か適応か:パラダイムの追求

第35章 適応型ソフトウェア開発:経験報告

第36章 コミットメント文化の創造:デッドライン、規律、マネジメント熟度度について

第37章 帰ってきた奇襲隊員:塹壕の経験から得た教訓

第38章 永続的モデル:企業資産としてのモデル

第39章 管理者のためのカードマジック:設計と意志決定のためのローテク技法

第40章 使い捨てソフトウェア:捨ててから引き渡す

第41章 統一の覇権:ユニバーサルソリューションを越えて

第6部 リーダーシップとチームワーク
第42章 スケールアップ:チームワークについて

第43章 チームワークの維持:ライフサイクルチームの促進

第44章 下からの管理:ロシア大使館手法

第45章 リーダーになる:未来の開発管理者への提言

著者の紹介

参考文献