津波と海岸林―バイオシールドの減災効果― 

書籍情報
ISBN978-4-320-07186-5
判型B5 
ページ数232ページ
発行年月2013年02月
本体価格4,000円
津波と海岸林 書影
津波と海岸林

防災から多重防御・減災へ とくに海岸林による減災効果について

東北地方太平洋沖地震津波では,防潮堤,防波堤など多くの防災施設が破壊され,ハード対策だけで人々の生活を守ることはできない事実を突きつけられた。しかも,わが国では,より人口の集中する地域である首都圏直下型地震や南海トラフ沿いでの巨大地震と津波の発生が予想され,その対策が急がれている。各方面で「防災」から「多重防御」,「減災」の考え方が示されている中,海岸林の減災効果は重要であり,減災対策の一環として位置づけられるべきものである。
本書は,近年発生したインド洋大津波やインドネシアでの津波の事例などを加え,広く同様の災害が多発している熱帯アジアを対象としている。過去の津波の際,海岸林はどのような減災効果を果たしたのか,現在の海岸林である砂丘上のクロマツ林,熱帯アジアのアダン林,ラグーン湿地でのマングローブ林など,海岸林の自然構成はどのようなものなのか,わが国の海岸防災林造成の歴史,およびそれらの海岸林が果たした減災効果について,生態学,林学,水理工学のそれぞれの視点から検証を進めている。
また津波の力学特性や数値計算による減災効果の検証から,海岸林の限界,課題についても考察している。その上で,今後あるべき多様な植生によるバイオシールドとしての海岸林の再構築案と,地域の自然環境や他の防災対策との関連の中で,沿岸部のグランドデザインについて提案している。
書籍の内容の理解を高めるため多くの写真,図版を使用した。また,書籍の補足の意味で,インターネットなどの情報システムを活用し,関連ウェブサイトを紹介,同時に著者らもウェブサイト上に関連情報を掲載した。

目次

第1章 海浜と海岸防災林
1.1 海岸の地形,地質特性
1.2 日本の海岸植生
1.3 熱帯アジアの海岸植生
1.4 海岸林と生物多様性
1.5 防災林の類型
1.6 わが国の海岸林が果たしてきた役割
1.7 進む自然遷移

第2章 津波と海岸林の減災効果
2.1 津波・高潮の特性
2.2 津波減災効果の研究
2.3 津波発生時に海岸林が果たした役割
2.4 インド洋大津波時に海岸林が果たした役割
2.5 ジャワ島南西沖地震津波時に海岸林が果たした役割(インドネシア)
2.6 バングラデッシュの高潮時に海岸林が果たした役割

第3章 津波・高潮による海岸林の破壊―機能限界を知る―
3.1 海岸林の津波・高潮減災効果と破壊現象
3.2 海岸林に働く津波の力
3.3 海浜における砂の移動特性と海岸林周辺の洗掘現象
3.4 樹木の破壊形態と破壊限界に影響するメカニズム
3.5 樹木の形態的特性と津波に対する耐性

第4章 海岸林の津波減衰効果―数値計算による検証―
4.1 熱帯性海岸樹木の減衰効果
4.2 海岸樹木の破壊による津波力低減効果の変化
4.3 海岸林周辺における津波の挙動
4.4 東北地方太平洋沖地震津波における海岸林の減衰効果

第5章 海岸防災林の造成とその事例
5.1 海岸クロマツ林の造成
5.2 熱帯アジアでの防災林造成
5.3 熱帯林の再生

第6章 伝統的な土地利用にみるバイオシールド
6.1 バイオシールドの役割
6.2 沿岸開発とバイオシールドの喪失
6.3 バイオシールドとしての樹林
6.4 防災グランドデザイン

第7章 バイオシールド,新たな提案
7.1 東日本大震災後の防災計画
7.2 海岸防災林を中心としたバイオシールド,新たな提案
7.3 バイオシールドを備えた沿岸グランドデザイン

索引
植物名索引