海洋の物理学

書籍情報
シリーズ名現代地球科学入門シリーズ 全16巻 【4】巻
ISBN978-4-320-04712-9
判型A5 
ページ数228ページ
発売予定2017年04月12日
本体価格3,600円
海洋の物理学 書影
海洋の物理学

新刊

 海は地表面の7割を占め,地球表層に存在する水の97%を貯えている。地球が「水惑星」と呼ばれる由縁である。また,海は地球上の生命が誕生した場と考えられており,母なる海とも形容される。
 人類は今,惑星に探査体を自由に送ることができる時代となった。しかし,歩けばたった数時間の距離である海の深部に,未だ自由に人を送り込めない。10m潜るごとに1気圧増加する高い圧力の壁が,人類の海での自由な活動を制限しているのである。
 この海を物理学の手法と考え方で理解していこうとする学問が海洋物理学である。すなわち,海洋物理学とは,「物理学の視点と手法をもって,海洋の成層と循環の動的な姿を観察し,その変動の機構を解明し,将来の変化を予測可能にする学問」といえる。
 近年,海は気候システムを構成する重要な要素として,また,溶かした物質を循環させる場として注目を集めている。海に関する科学的探究の歴史は約150年とまだ浅いが,探検的観測の時代から実験的観測の時代へと移り,私たちは今や,日々各種メディアで見られる天気図のように,「海の天気図」を作る時代を経て,さらにはモデルで海の予報を行う時代に入っている。とりわけ21世紀に入り,国際的な連携の下に整備された海洋監視のプログラムである「国際アルゴ計画」のインパクトは大きく,海洋に関する諸学問が急速に進展しつつある時代となった。
 私たちの大部分にとって海は身近なものとは言いがたいが,日々の天気や天候,季節変化,気候変動,地球温暖化など,それぞれにとって海は重要な役割を担っている。本書ではこの海の静的な,そして動的な姿をみていく。また,海はそれ自身のみで変動しているのではなく,大気からの強制力を受けて変動している。海の理解のためには,大気からの強制力を知ることも大切である。これも等しくみていきたい。
<序文より抜粋>

目次

第1章 地球の海
1.1 地球と海の誕生
1.2 大陸と海洋の配置
1.3 海の分布
1.4 海底の形状
1.5 海底地形の観測

第2章 海水の性質
2.1 地球表層の水とその循環
2.2 水の性質
2.3 海水の組成
2.4 海水の密度
2.5 海水中の音波

第3章 地球の熱収支
3.1 太陽放射と地球放射
3.2 熱の移動の形態
3.3 地球上での熱の移動
3.4 熱の南北輸送

第4章 海洋への強制力
4.1 海洋への強制力
4.2 バルク法
4.3 海面熱フラックスの分布
4.4 淡水フラックスの分布
4.5 運動量フラックス(風応力)の分布

第5章 海洋の成層構造
5.1 海洋の成層
5.2 水塊
5.3 水温と塩分の分布
5.4 水塊の移動と変質

第6章 海洋の大循環
6.1 海洋の流れの測定
6.2 表層の循環
6.3 中・深層の循環
6.4 海洋の3次元循環

第7章 海水の運動方程式と地衡流
7.1 回転系の運動方程式
7.2 運動方程式の各項の意味
7.3 スケールアナリシス
7.4 地衡流近似方程式

第8章 海洋大循環論
8.1 風に対する海洋の応答-エクマン層の理論-
8.2 エクマン流の収束発散とスベルドラップバランス
8.3 西岸境界流
8.4 深層循環論

第9章 海洋の短周期波動
9.1 波の基本的な性質
9.2 波浪と津波
9.3 境界面波と内部重力波

第10章 海洋の長周期波動
10.1 浅海方程式系
10.2 慣性重力波
10.3 ロスビー波
10.4 ケルビン波
10.5 海洋内部の長周期波動

第11章 潮汐と潮流
11.1 潮汐と潮流
11.2 起潮力
11.3 平衡潮汐論と動的潮汐論
11.4 潮流
11.5 潮位資料を用いた海洋変動の検出
11.6 内部潮汐と海洋混合

第12章 海洋の観測と監視
12.1 海洋の観測と監視
12.2 船舶による海洋観測
12.3 海洋の現場観測
12.3 海洋のリモートセンシング
12.4 XBTとADCP観測
12.5 海洋観測データの取り扱いポリシー

第13章 気候変動と海洋
13.1 気候システム
13.2 大気海洋相互作用システム
13.3 記憶装置としての海洋
13.4 エルニーニョ
13.5 太平洋数十年変動

第14章 地球温暖化と海洋
14.1 温室効果気体の増加
14.2 地球温暖化の仕組み
14.3 地球温暖化に果たす海洋の役割