惑星形成の物理―太陽系と系外惑星系の形成論入門― 

書籍情報
シリーズ名基本法則から読み解く物理学最前線 【6】巻
ISBN978-4-320-03526-3
判型A5 
ページ数144ページ
発行年月2015年03月
本体価格2,000円
惑星形成の物理 書影
惑星形成の物理

 人類が知る最初の系外惑星が1990年代半ばに発見されて以来20年,人類が見つけた系外惑星の数はいまや2,000個に迫ろうとしている。そうした系外惑星の中には太陽系惑星に似たものもあれば,大きく異なる姿をしているものもある。一方,火星や木星,小惑星など太陽系内の天体に対しても観測や探査が進み,それぞれの天体についてはもちろん,太陽系全体の形成や進化についての理解も大きく前進している。

 こうした太陽系の天体や系外惑星たちは,どのように誕生したのだろうか。太陽系の惑星と系外惑星の誕生の仕方は同じなのだろうか。私たちの太陽系は宇宙全体から見て「普通」なのだろうか,あるいは「特殊」なのだろうか。こうした問は,自分たち自身の起源の問題と密接に結びつく人類普遍の問の一つだろう。

 こうした問に対して,科学的に答えを得ようという試みがある。特に,物理的視点に基づいて惑星形成を調べる研究が「惑星形成論」である。本書は,そうした取り組みの一端を紹介するものである。

 本書では,惑星形成を議論する上で必要な基礎的な物理を簡単に紹介したのち,現代の惑星形成理論の枠組みや各論を一通り述べる。惑星形成は多くの過程が関与する複雑な現象だが,各部分の説明においては,そうした複雑な現象をどのように物理として捉えるかという視点を提示することに留意した。そのため,式の導出など各部の詳細を深く掘り下げた説明まではせず,むしろ,式の背後にある本質的な意味などを中心に説明した。

 本書の最終章では,これまでの惑星形成過程の理解を総合して系外惑星の観測データと比較検討する「惑星分布生成モデル」を紹介する。残念ながら現時点では,惑星形成の全てを理解するにはいたっておらず、惑星分布生成モデルも観測データのあらゆる特徴を説明するのは至っていない。現在も世界の多くの研究者がこの問題に取り組んでいてその挑戦は今後も続けられるが,最終的な答を得るのはおそらく筆者らの世代ではなく,将来の世代になることだろう。

 本書は,2010年代半ばにおける惑星形成理論の到達点を簡潔にまとめて示している。よって,惑星形成に興味のある多くの人たちにとって,その内容を理解するために有意義な一冊となるだろう。特に,この分野の研究で次に続く若い人たちが,先人達の理解を学ぶ際の一助となるだろう。一方で,惑星形成の研究を,多数の過程が関与する複雑な現象を理解しようとする作業の一例と捉え,そうした視点で本書を読むこともできるだろう。そういう意味で本書は,多くの人に楽しんでもらえるだろう。

目次

第1章 系外惑星と「惑星分布生成モデル」
1.1 多様な系外惑星系
1.2 惑星系の形成
1.3 惑星分布生成モデル

第2章 惑星系の物理の特徴
2.1 太陽系の惑星
2.2 軌道運動
  2.2.1 二体問題
  2.2.2 惑星形成領域で
2.3 粒子群同士の衝突
  2.3.1 気体分子同士の衝突
  2.3.2 光と物質の衝突
2.4 静水圧平衡
  2.4.1 天体が作り出す重力
  2.4.2 重力と圧力の釣り合い
2.5 潮汐力
  2.5.1 ロシュ限界
  2.5.2 円盤の自己重力不安定

第3章 惑星形成プロセス
3.1 原始惑星系円盤の熱構造
  3.1.1 円盤の温度:光学的に薄い場合
  3.1.2 円盤の温度:光学的に厚い場合
3.2 原始惑星系円盤の力学構造
  3.2.1 鉛直方向の構造
  3.2.2 動径方向の構造
  3.2.3 太陽系復元モデル
3.3 円盤降着
  3.3.1 角運動量輸送
  3.3.2 質量分布進化
  3.3.3 円盤ガスの消失
3.4 ダストの運動
  3.4.1 ガス抵抗則
  3.4.2 ガス・ダスト2成分流体の運動
3.5 ダストの合体成長と微惑星の形成
  3.5.1 付着成長
  3.5.2 重力不安定
3.6 微惑星の合体成長
  3.6.1 成長時間
  3.6.2 暴走成長
  3.6.3 寡占成長
  3.6.4 ヒル半径,孤立質量,巨大衝突
3.7 ガス惑星の形成
  3.7.1 限界コア質量
  3.7.2 準静的ガス流入
3.8 軌道移動
  3.8.1 タイプI移動
  3.8.2 タイプII移動

第4章 惑星分布生成モデル
4.1 太陽系惑星の作り分け.
4.2 系外惑星の多様性の起源
4.3 惑星分布生成モデルのレシピ
4.4 惑星分布生成モデルが示すもの

参考図書